賀茂なす

賀茂なす

プロフィール

 「賀茂なす」は、京野菜と言えば真っ先に思いつくのが「賀茂なす」と言うほど京野菜の代表的な存在です。上賀茂地域を中心に多く栽培され、5月から8月にかけて収穫期を迎えます。夏の京料理の会席にも欠かせない食材の一つです。
 賀茂なすは表面の光沢が美しく、へたの下が白い、大型の丸いナスです。ソフトボールのような正円形で、直径10〜12cm、重さは400〜500g、大果は1kgにも及びます。
 果肉は厚く、トロリと滑るような食感と深く濃い味わいで、肉質がしまって密なため煮ても焼いてもくずれません。ナスの女王ともいえる風格と味わいを持つ京の逸品です。

来歴

 起源は明らかではありませんが、「雍州府志(ようしゅうふし)」(1684年)に丸くて大きいナスが栽培されていた記述が残されており、その頃すでに栽培されていたことを読み取ることができます。
 もともと京都市左京区あたりで生産されていたのが京都市北区上賀茂、西賀茂およびその周辺に移って盛んに栽培され、明治時代に「賀茂なす」と呼称されるようになったと云われています。
賀茂茄子豊作祈願祭

上賀茂神社とのかかわり

 京都で最も古い神社と云われる上賀茂神社では、特産野菜研究会の行事として、賀茂なすの植付式(種採取用)、豊作祈願祭(苗分け式)、葵祭賀茂なす奉納式などが行われます。
 また正月の歳旦祭には古儀による神饌として賀茂なすの塩物が供えられるなど、神社と農家の繋がりを大切に上賀茂の農業文化が今に伝えられています。
作業風景

栽培方法

 ハウス半促成栽培と露地があり、5月~8月に安定した出荷が行われています。定植時期を早めたりハウス栽培を行うことで出荷時期の早期化に努めています。
 なお、高温期になり過ぎると色つやを失ってくすんだようになります。また日当たりが悪いと果色が赤紫色になりやすいため、枝をやや開き気味に誘引して日当たりを良くしたり、樹の負担を軽くするため着果量を制限し、水分と肥料を切らさないように管理します。
賀茂なす田楽

食べ方

 賀茂なすの料理といえば田楽が有名です。
 油の吸収が少なく肉質が緻密で煮炊きしても煮くずれしにくいため、歯ごたえが良く揚げ物に適しています。こうした特徴から田楽や揚げ出し等の揚げ物はもちろんのこと、煮物や焼き物等、広く利用されています。