すぐき

すぐき

プロフィール

 「すぐき」は、300年もの永い伝統を持つ京を代表するつけものです。原料であるすぐき菜は上賀茂地域に伝承する在来のかぶの一種で、漬物となったとき特有の風味のある酸味(乳酸発酵)から「すぐき」と名付けられました。
 またすぐきには豊富な乳酸菌が含まれており、腸の働きを助けるだけでなく、インターフェロンとの関係も注目されています。伝統の技と塩だけで添加物は一切使用せず漬け込む正真正銘の自然食品です。

来歴

 すぐきの栽培や漬物は、上賀茂の社家から始まったというのが定説となっています。それは原料のすぐき菜が土を選ぶカブラの一種で、栽培地域が松ヶ崎より西、北山通りより北部という上賀茂の狭い地域に限られていたからです。
 なによりの理由に挙げられるのは、桃山時代の頃(約400年前)に上賀茂神社に奉仕する社家の一人が京都御所から種子を貰い受け、自分の庭で栽培したのが始まりだったことです。賀茂菜とも呼ばれるすぐき菜は、上層階級の贈答用に珍しい高級品として扱われ、それゆえに永く製法は秘伝として門外不出でした。
 その後約三百年前の飢饉で難民救済のために製法を公開し、すぐき作りはようやく伸展していきました。社家の庭で栽培したことから「屋敷菜」、京都御所に仕えた社家の某が宮中から種子を賜ったから「御所菜」という別名を持っています。
 江戸時代、元禄の頃に出版された『本朝食鑑』には『年を経て酸味を生ずるので酸茎と称す』と記されています。京都では明治の終わり頃、大阪・東京では大正時代から売られたと云われています。またすぐきの「天秤漬け」(天秤を使って漬ける)は、昭和初期に始まり現在まで続く偉大な知恵です。
葵祭

上賀茂神社とのかかわり

 葵祭の終着点として知られる上賀茂神社は、伊勢神宮に次いで高い位を与えられた京都最古の神社です。その格式を物語るように、気品に満ちた檜皮葺きの社殿や神が降り立つという不思議な立砂が、凛と澄みきった高貴な美しさをたたえています。
 楢の小川と呼ばれる神聖な浄めの川は、神社を出て明神川と名を変え、その川沿いに上賀茂神社の神官たちの屋敷である社家が清楚な佇まいを見せています。前述の通り、この社家からすぐき菜の栽培が始まったと云われています。
収穫風景
①収穫
面取り
②面取り
荒漬け
③荒漬け
天秤押し
④本漬け「天秤押し」

すぐきができるまで

①収穫
 11月になると、農家の庭先に収穫の始まったすぐき菜がうず高く積まれていきます。
②面取り
 収穫したすぐき菜のかぶらの皮を包丁で剥ぎ取ります。
③荒漬け
 面取りの後、ていねいに皮をむいて真っ白になったすぐき菜は、水を張った直径2mもの巨大な樽で一晩、たっぷり塩をふり重石をかけて漬け込まれます。これで塩の浸透をよくして本漬けの準備が整います。
④本漬け[天秤押し]
 四斗樽の底から渦巻き状に、一段ずつたっぷり塩をかけて並べられたすぐき菜は、この地特有の「天秤押し」でじっくり漬け込まれます。
 この「天秤押し」は長さ3〜4mの丸太ン棒の先に重石をくくりつけ、テコの原理を応用して相当な圧力をかけるというこの地特有の優れた知恵です。樽のふたには清らかな塩の華が咲いて、上賀茂の冬の風物詩として親しまれています。
⑤室(むろ)
 本漬けが終わったすぐき樽を、室と呼ばれる一室で約一週間乳酸発酵を促します。それにより、あの特有の甘酸っぱい香り・コクのある酸味が生まれます。
⑥完成
 室から出して自然に冷やせば『すぐき』が出来上がりです。樽から出したての鈍い光沢が出てきます。
 近年は乳酸発酵のヘルシー食品として高く評価されています。

すぐき

「すぐき」のおいしい食べ方

【ご飯のおともに…】
①水でサッと洗ってください。
②葉茎とかぶらを切り離します。
③かぶらは、まずタテ半分に切り、それを山型に3mm程度の厚さで切ります。
   葉茎は、みじん切りにして添えます。
④お好みにより醤油を少々。ご飯との相性はもちろん、酒の肴にもぴったりです。
【すぐきの葉茎を使って…】
◆漬物炒飯
①葉茎を水でサッと洗い、みじん切りにする。長ネギもみじん切りにしてハムは小さなあられ切りにする。
   卵は割りほぐしておく。
②鍋を充分焼いてサラダ油をなじませ、割りほぐした卵をふっくらと炒める。
③ご飯、葉茎、ハム、ネギの順に炒め、出来上がりにゴマ油と醤油を鍋の周囲からたらして混ぜ合わせる。
※ゴマ油は香りづけのため、醤油は香ばしさを出すためです。

◆すぐき葉おにぎり
すぐきの葉先を広げ、中にご飯を巻いて(海苔の代わりに使う)おにぎりにして食べてもおいしいです。